第60話 知るより感じろ!
もう十数年前であるが、娘と良く行った西表島でジャングルトレッキングに参加した。
そのツアーガイドの方、西表のエコツアーの第一人者で、たまにテレビにも出られるガイドさん。
このガイドさんの口癖が、
百聞は一見に如かず、百見は一触に如かず、百触は一験に如かず
※正確ではないかも・・・
「百聞は一見に如かず」は今更言うまでも無いが、
百回繰り返して人から聞くよりも、たった一度でも自分の目で見るほうが確かでありよくわかる、
同様に、
百回見るよりも、一度でも触ったほうがよくわかる、
百回触るよりも、一度経験したほうがよくわかる、
という意味である。
このガイドさんが、どこに行っても、何を見つけてもこれを頻繁に使い、何でも触らせようとする。
しかし、特に都会育ちの我々親子にとって、ここのジャングルトレッキングは図鑑やテレビ等で知識はあっても、実際に見るもの、触るもの全てが新鮮であり、まさにこの「口癖」がピッタリ当てはまるいい経験で、素晴らしいガイドさんであった。
私も常々子供達にスポーツ指導をする際、
(ボランティアで地元の小学生を対象にマリンスポーツ等を教えています)
特に初心者には「知るより感じろ!」と教えている。
いろいろと、知識として頭で知ろうとしないで、まずは体を使って感じてみろ、
という指導である。
よく「大人は頭で考えてから(理解してから)体を使おうとするので、子供より覚えが悪い」といわれるが、これが、すなわち「知るより感じろ!」である。
そして、この言葉の意味を、私自身がまざまざと思い知ることになる。
つい先日、奥多摩へカヌー教室に行き、「エスキモーロール(注)」を習った時の事。
(注)「エスキモーロール」は、転覆したカヌーを艇に乗ったままで元に戻す(返す)技で、
昨年久々に試したところ出来なくなっていたため、この程初心に立ち返り習いに行きました。
以前は普通に出来ていたことである。少しコツを教えてもらえれば簡単に・・・。
そのコーチからは、一番初めに、
「まず、自分の今までの知識とか経験をカラッポにしてください」と言われた。
そう、「知るより感じろ!」である。
基本から教えていただき、早々にプールで実地練習。
「カラッポ」の時はすんなりと、意外なほど簡単にポンッと戻るが、頭で考えるとなかなか出来ないのである。
特に他人に教えたり、なまじ知識がある分、今の体勢は?パドルの位置は?右はどっち?
(転覆している状態で逆さまに水中にいるため方向感覚が定まらない)
すなわち、考えているのである。
2~3本成功し、「次はさっきよりも腰の返しを・・・」などと考えようものなら、「でっかい頭」が邪魔をして、たちまち失敗するのである。
もちろん、頭で考えても出来る大人も沢山いるであろうが・・・。
この「カラッポ」の難しさと自身の頭の固さを再認識し、身心ともにぼろぼろに打ち砕かれた、
でもとてもいい経験になった。
そういえば、中学の頃大ヒットし、夢中になり、その後何度も見たブルース・リー主演の「燃えよドラゴン」。
この作中、自分の弟子にカンフーを教えるシーンでも似たような名言があった。
「考えるな! 感じろ!」
今更ながらにこれを体現し、この言葉が骨身に染みた「一験に如かず」でした。
日付2018/05/30