第57話 脱、無菌幻想!
今年に入り過去最多の患者数を記録したとの報道がされている等、巷ではインフルエンザ大流行のおり、
先週、熱が39度まで上がったため、医者嫌いの私が記憶に無いほど何年かぶりに(怪我以外で)医者に掛かった。まさに「鬼の霍乱(かくらん)」である。
これは、家族から
「インフルエンザなら皆に迷惑がかかる」
との最もな指摘に従ったものであるが、結果は、ただの風邪とのこと。
原因は十二分に思い当たり、明らかにこの前日の「油断」に他ならない。
自業自得である。
インフルエンザでは無いことがわかり、感染防止のマスクと独自のニンニク療法(ただニンニク、ネギを多めに食べるだけ)、そして早めの睡眠で自己の自然治癒力に託し・・・、
4~5日で諸症状がほぼ完治した。
今まで、インフルエンザの予防接種等は一度も受けたこともなく、うがいやマスク等の予防策もとっていない。
これほど無防備に出歩いているのだから、恐らくは頻繁に様々な細菌やウィルスに感染しているに違い無いが、医者にかかる程、重症化するような事態になったことは成人後は皆無であった。
いつもながら勝手な推測ではあるが、これは自己免疫力のタマモノであると確信している。
その自分勝手な過剰な自身から、今回は「油断」し、免疫力が低下し感染、そして発症につながったものである。
思い返せば幼少の頃、近所の子が「水痘症(みずぼうそう)」や「麻疹(はしか)」にかかったと聞けば、母に「直ぐに行って、うつしてもらいなさい」と追い出されたものである。
これは一度感染すると二度とかからない病といわれていたため、元気なうちに感染しておいた方が安心、
といった思いからで、あながち間違っていない気もするが、真偽のほどは???。
現在でも、出張や旅行等である程度の期間、特に海外に行く時は、現地に着いて直ぐ、なるべく生の水を口にするようにしている。これは、前述の「水痘症」同様に、一度現地の菌に感染し抗体を作る、まさに、「水に慣れろ」作戦である。
一度、タイ北部の山岳地帯からラオス、ミャンマーを旅した際、現地の食べ物にあたり、観光地巡りの最中に酷い状態になったことがあるが・・・。
これらを自己分析すると、「免疫力」と「抗体」の相乗効果であると思っている。
(専門家では無いので、内容の不正確さは悪しからず)
免疫力が低ければ、体内に侵入した抗原(ウィルス、細菌等)に対して有効な抗体を作れず重症化してしまい、更に免疫力が低下する。逆に、免疫力が高ければ、抗原に負ける(重症化する)こと無く抗体を作り出し、有効な免疫細胞を体内に蓄積し(記憶し)更に免疫力を向上させる。
様々な抗原に触れれば触れるほど、勝手に体内に抗体が蓄積され免疫力が上がる、
相手の攻撃に対して一時的に受けるダメージ(下痢や発熱等々)から学び、それを活かして、お金もかからず勝手に自身の防御レベルを向上させる、 生物に自然と備わったなんと素晴らしいシステムであろうか。
しかし、昨今、やたらと、殺菌、滅菌、除菌等々、潔癖症とも言うべき風潮に大いに疑問を持っている。
身の回りには無数の菌が存在し、いうまでも無く人間は細菌と共存している。
どんなに石鹸で洗浄しようが消毒しようが人間の皮膚には細菌が存在し、多くの場合その常在菌が肌を守ってくれている事実。肌環境のみならず、腸内環境でも善玉菌と悪玉菌のバランスがその健康状態に大きく関わっていることは良く知られている。
無菌状態(?)の胎児が、出産により母体から様々な菌に感染し、それにより初めて抗体を蓄積し抵抗力をつける。また、粉ミルクより母乳の方が健康に育つのは、母乳に含まれる細菌の影響である、云々。
つまりは、細菌と人間は上手く、仲良く付き合っていかなければならない存在なのである。
以前に、産婦人科医の友人から興味深い話しを聞いた。
「清潔で快適なウォシュレット(洗浄便座)の普及により、アレルギーや免疫疾患の患者数が増えた」という研究結果が報告されたとのこと。
要は、妊婦が洗浄便座を使用することで、膣内の細菌(善悪共に)を減少させ、出産時に新生児に感染する菌の数が減ることで、その後の子供の免疫力に影響を与えている、ということらしい。
そのため、アメリカでは産道を通らず帝王切開で生まれた新生児に、母親から採取した粘液をあえて摂取させている病院もあるとのこと。
また日常生活において、朝シャンにより頭皮疾患が増えたり、日に何度も入浴することで「肌バリア」を弱くしてトラブルを引き起こす、
すなわち、過度な清潔意識が逆に自分自身の健康に悪影響を及ぼし、常に細菌に対する無意味な強迫観念にとらわれ、結果的に自分の生活に制限を強いることになっている。
個々人ではどう考えようが、何に対して潔癖になろうが自由であるが、不必要に行政が、また企業が「清潔」をあおり過ぎていることに違和感を感じるのは私だけであろうか?
潜伏菌や空中浮遊菌だの、菌移り云々などを気にし無菌幻想に陥るより、細菌と上手く付き合い自己免疫力を高めることに注力したほうが、どんなに活動的で暮らしやすいことであろう。
よく「食器のつけ置き洗いはどぶ川と同じレベルに不衛生」などセンセーショナルなコメントを見聞きするが、単純に増殖した細菌数を比喩的に表現しあおっているに過ぎず、最終的には流水で洗い流せばいいことでは無いか?
昔から言われた「三秒ルール」のごとく、地面に(床に)落として直ぐに拾って、汚れをパっと落としてパクッ。
また、登山やキャンプ、ハイキングなどのアウトドア環境では、土や泥で汚れた手をズボンで拭うだけで、手づかみで食事をすることも常であるが、それによって腹をこわしたことは一度も無い。
(これは私に限らず多くの方が経験しているのではないか)
世界的に見ても今の日本は長寿大国として有名であるが、最近は健康寿命、すなわち、心身ともに健康で活動的に生活できる期間がどれだけ長いのか、が注目されている。
どれだけ長生きするのかより、どれだけ健康な生活をおくれるのかが重要である、といった最もな考え方である。
ある友人が、
「今の日本の長寿は、戦争を体験してきた世代がいるからだ」
と言っていたが、私もある意味では同感である。
戦渦の中で食物も限られ十分な栄養もとれず、衛生的にも劣っていた(?)時代を生きてきた世代、
熱帯感染症に侵され有効な治療薬も無い中で何カ月もジャングルをさまよい、
またレイテやガダルカナル等の激戦地を飢えに耐え生き延びてきた方々は、今の栄養過多の飽食の時代に生き、過保護な衛生環境で生活する我々世代より、免疫力も生命力も強いものと推察する。
医療の発達は言うまでも無いが、それにも相まって、個々の生命力が圧倒的に高い世代が、現在の(健康)寿命を押し上げているものと感じている。
今後、益々医療が進歩しても、我々戦後世代が現在のお年寄りと同じように元気な80代、90代でいられるか、健康寿命を更に上げていけるものか、・・・?
あまりに過剰に嫌菌(私の造語です)することで、これだけグローバル化が進む現代において自分の行動範囲を狭めるのみならず、今後必ず起こるパンデミックや自然災害に際し、どんな衛生状態の中でも順応し生き抜く生命力を身に着けることは難しい。我々現代人が、医療に頼り過ぎず身心共に健全に生き、健康寿命を延ばすには、企業に踊らされた「癖」ともいえる衛生観念にとらわれず、細菌と上手く共生し自己免疫力を高めることこそ選ぶ道であると考えるがいかがであろうか。
ここで述べていることはあくまで持論であり、個々人が状況判断し自己責任で行うものであることは言うまでもない。もちろん、先天的に免疫力が低かったり、病気や加齢により抵抗力が弱っている方は論外である。
今般の「風邪ひき」では、自己の健康管理について多々反省もあり、更に自身の「免疫防衛部隊」を見直し強化する切っ掛けにもなった。
最後に一応補足しますが、
衛生上、流水で洗い流すことの有効性は、管理衛生士の資格を取得した時に習ったものです。
日付2018/01/29