第54話 想像する時間
大人から子供まで、電車内の日常となった「スマホ」や「ゲーム機」を熱心に操作する風景。
たまに、座席に反対座りして車窓から外の風景を目を輝かせて眺めている子供の姿を目にすると、
とても懐かしくほっこりした気持ちになる。
あの子は、何を考えながら流れる景色を追っているのだろうか?
などと余計な詮索に自分の想像を膨らませる。
まだ、行動範囲の限られた子供にとって、窓の外に見える様々な情景に、
チョットした「旅」を楽しんでいるようにも見える。
旅が好きな方は大勢いるが、その楽しみ方は三者三様である。
私は、同行者がいたらいたなりに、また自由気ままな一人旅も好きである。
車の運転も全く苦にならないが、特に一人旅の移動手段は公共交通機関、出来るなら電車(新幹線)より飛行機がいい。
そして断然「窓側席」である。
日常から遠く、上空10,000m付近から地上の景色を俯瞰し、頭の中で20万分の1の地図帳と照らし合わせる。
ゆっくりと移り行く地形、模型のような街並みや豆粒のような自動車、また、緑一色の山林の中に、ポツンと小さな家等を発見すると、そこでどんな人がどんな営みをしているのか等と、勝手に想像を膨らませる。
海外では、日本と違ったその土地柄の風景の移り変わりを堪能できる。
広大な原野からいきなりポンッと街が現れたり、砂漠から緑生い茂る森、そして湖へと刻々と変わる大自然。
家並みも、家の造りも色も、その国や土地、気候の特色が反映され、それを想像することも楽しい。
海の上を飛ぶ時も、白波の動きを感じて海上の状況を想像したり、大海原の中に船を見つけると大発見をしたかのように心を躍らせ、どこからどこに行くのか、何をする船なのか、等々観察しまた想像する。
また、それら想像から、家族のこと、会社のこと、あるいは自分の過去や未来にタイムスリップすることも常である。
時に、魅惑的な情景を見せてくれるのが夜間飛行である。
日没後、太陽が隠れたしばらく後まで、広い空を様々な色に彩る変化を楽しめる。
コンディションとタイミング次第で、目の前に浮かぶ満月が穏やかな海面に反射して揺れる「二つの月」
を見れることがある。
こんな時は、ただただ自然の神秘さ、雄大さに心をあずけるのみである。
特に何もしない時間、それは考える時間、想像する時間に等しいと思う。
そのための時間に、特に一人旅の移動時間が最適だから、私にとって至福の時間であり、
この移動の時間も含めて旅を楽しんでいるのである。
さて、窓の外を眺めている子供が何を考え想像しているのか、ただ動く風景に目をやっているのか、
それはどちらでもいいことである。また、ゲーム機に没頭している者も、ゲーム中のキャラクターと一緒に冒険をし想像力を働かせていることもあるだろう。
ただ、私が思うに、デジタル機器により、単に入って来る情報を処理し吸収する頻度が多く、自分の頭で考え、想像する時間が少なくなっていないか、少し心配している次第である。
出張などの場合は、プレゼン資料に目を通したり、準備書類を確認したり、何もしないことはなかなかできない。
また、通勤中は新聞を読むことが習慣になっている。しかし、そんな中でも、ふと目を向けた車窓の外に富士山が見えると、心が和み、しばし娘との富士登山を回想する。
食事やトイレ中にまで、スマホを操作する者が多いという昨今、
是非、通勤中(通学中)、スマホの画面から目をそらして、10分程度窓の外を眺めてみて欲しい。
同じ風景だと思っても、毎日必ず何か変化が見える。また、空や雲を眺めるだけでもいい。
そこから何が思い浮かぶのか、どんな想像が膨らむのかを楽しんでいただきたい。
(地下鉄は・・・)
ちなみに、飛行機において、路線や航空会社、時間帯により窓シェードの開け閉めにルールがあるので、
ご注意を。
なお、夢中になるあまりおでこを密着させ、窓に付けたひたいの脂は、
飛行機を降りる際に拭き取るようお願いします。
日付2017/09/14