第33話 「ハンザワ」
珍しい偶然は続くものである。
先日、通っているジムで体組成の測定をする際、若いジムスタッフが驚きを隠さずに思わず発した。
「へえ、本当にいるんですね~!」
体組成計は、身体を構成する「筋肉量」「骨量」「脂肪量」「水分量」等を計り、身長・体重等の体型と比較して身体の構成バランスを判断するものである。
最近では、家庭用の体重計にも体組成計が付いている機器も売られている。
目では見えない体組成を計測し、肥満等の生活習慣病の予防・改善、また、筋肉量及び基礎代謝量の減少や内蔵脂肪の増加等を知り、自分のトレーニング内容及び成果を可視化してくれる優れものであり、私は、毎月1回体組成を計測し、自身のトレーニングプログラムに生かしている。
体組成を計測する際には、そこにいるスタッフに自分の名前を告げて登録情報と照会してから計測を開始するが、トレーナーは誰でも測定ができるため、顔なじみのトレーナーの場合もあれば、初めてのスタッフが対応することもままある。
「測定お願いします」
「はい。お名前をお伺いしてよろしいですか?」
「ハ・ン・ザ・ワ ト・オ・ル といいます。」
ここまでは、普通の流れであるが、
「えっ、・・・?!」
「はっ?!」
「ああ、いや、あの・・・」
「・・・へえ、本当にいるんですね~!」
はたと気がついた。
去年、何度か似たような状況を経験している。
このスタッフさん、TBSドラマ『半沢直樹』のファンなのだ。
放映当時は「ハンザワ」に反応した人も多くいたが、今年に入ってもまだあるとは。
にこやかに、
「ハンザワ、珍しいですか?」
「はい、ドラマだけかと思ってました。」
(そんなことあるかっ~!)
屈託無く、笑顔で正直な感想を応える若いスタッフさん。
私が小学生の頃、電話帳で「ハンザワ」を調べたことがある。当時で全国版に登録されていた「ハンザワ」は18件程度だったと記憶しているが、現在はどうであろう?
かなり増えたとは思うが、まだまだ少ない姓であろう。
私も今までの人生の中で、赤の他人の「ハンザワ」に会ったことは1人だけである。
(「半沢」であり「半澤」では無かったが・・・)
ところが、
先日、立て続けに新たに2人の「半澤」さんに出会ったのである。
まずは、福岡に出張した際、搭乗した某航空会社のCAさん。
飲み物のサービスを行っていたCAさん、コーヒーを差し出していただいた際、胸のネームプレートに「半澤」と刻まれているのを発見。
思わず私も免許証を見せて「半澤」話しで盛り上がる。
出身地等も確認してみるが、全く遠縁でも無さそうであったが・・・。
(半澤さん、お忙しいところ申し訳ありませんでした)
その翌週のことである。
新宿駅前の家電量販店で買い物し、自宅までの配送をお願いするために配送伝票を書いたところ、
そのご担当が驚きの声を上げた。慌てて名刺を差し出し
「私も、半澤っていうんです」
そこでまた「半澤」話しに花が咲く。
領収書を書いていただく時、
「半澤の担当印で問題ありませんでしょうか?」
「・・・。」
なるほど。そんなことまで考えたことは無かった。
税務署等、第三者がその領収書を見たとき、宛名も担当も「半澤」では疑義を抱くということであろう。
「違う担当者に押してもらいましょうか?」
「全然構いませんよ♪」
別に何らの不正も無いのである。
鈴木さん、田中さんなら、そんなことに気を使うまいが、「半澤」では気を配る必要があるということか。
その店員さん、
「この仕事で多くの人に出会いますが、半澤さんに会うのは初めてです」
実際には、会っていても相手の名前を確認しない限りわからないことではあるが。
もっと珍しい名前も沢山あるが、あれだけ「倍返しだ!」がブレイクし、名前がタイトルに使われ「ハンザワ」の認知度がアップした昨今、もう少し様々なシチュエーションを楽しめそうである。
しかし、数日の間に2人の同姓と出会う等という偶然は・・・、
ご先祖様のお導き?
池井戸潤さんは、どのようなキッカケで
「ハンザワ」
を主人公に選んだのかは知る由もないが、
何にしても、悪役で無く「ヒーロー」だったことに感謝しております。
えっ?
もちろん、日曜日夜9時、欠かさず見ておりましたよ♪
日付2015/05/14