第2話 カンバセーションよりコミュニケーション
最近、しばしば海外に行くことも多く、言語はもちろん、文化も習慣も 異なる人たちとコミュニケーションをとることが多い。
当然、第一の壁はまず言語であるが、昔から旅が好きで、
言葉の通じない国でも一人で旅をすることも平気であった私。
最低限「こんにちは」「ありがとう」の2つの現地語は覚え、後は身振り手ぶりで、
ある時は筆談(お絵かき)を交えて意思伝達を試み、それなりに通じることを実感してきた。
しかしながらビジネスではそうはいかず、当然その「壁」に対して通訳さんをお願いすることになる。
さて、ヴェトナムとの業務提携に伴い基本契約を結ぶ時点で、日本から通訳さんを連れていくことに。
通訳さんのお陰でスムーズに双方の意思も確認し合い、無事契約調印と相成った。
(双方通訳を立て、[日本語]ー[英語]ー[ヴェトナム語]と、英語を介してのコミュニケーションでした)
その夜、食後に先方とそのミーティング会場(ホテル)のラウンジで一杯飲むことになり、そのわずかな間を利用し、我が方の通訳さん、そのホテル内のショッピングセンターに一人で買い物に行くことにした。(やはり女性はショッピングに目がないもの)
彼女は日本人ではあるが、いわゆる帰国子女。
海外(アメリカ、ヨーロッパ)にも長く居住し、英語は勿論、フランス語やドイツ語も使いこなす方。
初めてのヴェトナムとは言え、そこはセキュリティも万全なホテル内のショッピングセンター。
「30分くらいで戻りますね」
「時間は気にしないでいいから、気をつけていってらっしゃい」
何の心配もなく、ラウンジから送りだした。
ところが、1時間が経過しても戻ってこない。
少々、心配になったが、そこは同じホテル内のこと。
楽観的に、先方と気持ちよく酔い、談笑しているところへ、通訳さんが泣きべそ顔で帰ってきた。
帰る場所がわからず、小一時間ホテル内をさまよい歩いていたとのこと。
「店員やガードマンに場所を聞かなかったのですか?」
「もちろん、あちこちで行き方を聞きました~。でも言っている意味がよくわからなくて・・・」
(ヴェトナムでは、ほとんどのホテルで英語が通じます)
そのホテルではセキュリティー上、ショッピングセンターから直接ホテルには上がれない構造にはなっている、が・・・。
これは、いったいどうしたことか?
もちろん、世界には「英語」と言っても「ブリティッシュ」はもとより「カナディアンイングリッシュ」、
「オージーイングリッシュ」、または「シングリッシュ(シンガポールイングリッシュ)」など、
「訛り」とは言えないレベルの英語が存在している。
想像するに、その通訳さん、同じホテル内という油断もあり、そこで右も左も分からなくなってしまった状況に、軽度なパニックに落ちったとみられる。
その結果、彼女のより丁寧な(パーフェクトな)英語に、現地の店員さんの受け答えも理解できず、更にパニックになってしまったようであった。
後に聞いた話し、その場で何を思ったか、携帯電話(もちろん日本の)で場所を検索しようとしたらしい・・・。
もし、私であったら、その場において、数少ないボキャブラリーを駆使し、滅茶苦茶な文法でも、目的地に行くという意思を伝えようと したであろう。
もちろん、この事件(?)は、パーフェクトな英語圏であれば起こらなかったでしょう。
しかし、そこはベトナム、ホーチミンのアジアン英語。
通訳さんは、そこでパニックの中、カンバセーション(会話)をしようとした、
しかし必要だったのは、カンバセーションよりもコミュニケーション(意思伝達)だったのではないか。
このようなケースは特別のことであろうが、
「カンバセーション」より「コミュニケーション」、これは常日頃から考え、気にしていることである。
コミュニケーションについて、私が考えること、
それは、自分の意思を伝える前に、相手の立場や気持ちを理解する(しようとする)こと。
同じ内容の言葉であっても、相手の状況や立場によって言い方やテンポ、トーンも変える。
かく言う私、思春期に入った我が娘とのコミュニケーションができず、日々頭を悩ませております。
「若者言葉」のカンバセーションもできませんが・・・
日付2010/11/11